にっき Diary

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グラッドの記憶

幼い頃から人の顔をあまり見た記憶がない。僕が見ているのは「つむじ」と呼ばれる部位であることを、誰が教えてくれたのだろうか。
僕の前にひれ伏す人、人、人。僕が「面を上げて」と言うまで顔を見せてくれない。顔を見せたと思ってもすぐに伏す。

「あなたは神であり、我々の<喜び>なのですよ」

たまに、僕にひれ伏さず、顔を見せてくれる人もいる。たいていは年老いた男で、着ているものが豪華で、杖を持っている。彼らは何人かいて、入れ替わり立ち替わり、僕の食事や衣服を提供し、僕の衛生を保つ。僕の排泄物入れには引き出しがついていて、中身が溜まると持ち去られていく。僕が風呂に入ると、浴槽に貯められた湯も汲み出されていく。

「さぁ、我らが神が、完成した!」

僕が精通した時には、とんでもない騒ぎになった。今までも「お許しを」と言われては皮膚を傷つけられて血を啜られたが、その比ではない。僕を射精させようと、ありとあらゆる試みがなされた。最初は大人の女が来た。次に僕と同い年ぐらいの女の子がよこされた。その次には僕と同い年ぐらいの男の子が来たり、女の形をした男が来たり、それから、それから。

「あぁ、君、喋れるかい。名前とか、あるかい」

──老爺が僕の顔を覗いていた。火の爆ぜる音。灰色の煙。焦げる肉の匂い。

「喋れないのかい」
「そなたは、誰だ……」
「君が住んでいたこの村は、悪いことをしていた。だから、検挙──んんっと、この村はもうおしまいだし、君はここに住めない」
「我が民が、悪を為していたというのか?」
「うん、そう」
「では、民を守護していた我は……」
「とりあえず、捜査本部に一緒に来ようか。精霊種──君の仲間は、他にはいない?」
「我の仲間とは……」
「つまり、君と同じように、民に守護を与えていたような」
「母上のことか」
「そう、お母さん。どこかに」

僕と老爺の会話に「部長!」と割り込む者があった。

「裏の建物、液化した精霊種が。おそらく吸血種の実験もしていたんでしょう」
「ああー……そっかあ。じゃあ、君は僕と一緒に、安全な場所に行こうね」

老爺は割り込んできた者には目もくれず、僕の手を引いた。

「部長、なんですか、その子は。村民なら──」
「捜査本部で話すから! 精霊液、回収しといて!」

老爺の足取りはしっかりしていて、若いはずの僕は、足をもつれさせながら、頼りなくその後を追う。

「ああ、そう、君の名前は、何て言うんだい」
「<喜び>」
「ふん。グラッドね。まぁ、そんなに悪い名じゃないから、そのまま名乗りなさい」

というので、僕の名前はその日から、グラッドになった。

#プロット #男精霊種畳む

by primenumber_nak. 一次創作 <1126文字> 編集

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▼最後に投稿または編集した日時:

2022年5月16日(月) 00:24:53

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